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やらなくていいことを、やらない。その時間を、サロンの未来に使う。美容サロンコンサルティング ma chérie

東京都港区 専門・技術サービス
美容サロンコンサルティング ma chérie の取材写真

美容サロンの集客から運営までを伴走するコンサルティング会社です。社内の管理業務はAIで自動化し、生まれた時間をクライアントの分析と集客に充てる。人が向き合うべき仕事に、人の時間を戻すための仕組みづくりを進めています。

美容サロンのコンサルティングを手がける ma chérie。代表の森拓也氏は、リクルートでホットペッパービューティーのエリア統括マネージャーを務めたのち、2024年7月に独立した。

社内には、自社で組み上げたポータルサイトがある。誰にどの仕事を振ったか、期日は過ぎていないか、今月の残タスクは何件か。それらが一覧で表示される。つくったのは森氏本人で、生成AIを使って組み上げたものだ。

生成AIを使い始めたきっかけ

明確な一日があったわけではない、と森氏は言う。

「正直、これというのは覚えていないんです。ただ、便利なものはずっと探していました。効率のいい仕事の仕方を、ずっと探していて」

独立したての頃は一人だった。クライアントが1店舗、2店舗のうちは、すべて自分でこなせる。だが、担当する店舗が増えていくにつれ、一人では対応しきれなくなった。

スタッフを入れれば解決する。しかし人を増やせば人件費がかかり、利益を圧迫する。そこで森氏が考えたのは、人を増やすことではなく、自分の時間を増やすことだった。

「とにかく、自分の時間を作り出したかった。無駄がすごく嫌いなので」

その感覚には前史がある。リクルートで働いていた頃、無駄だと感じる業務が数多くあった。それでも避けて通ることはできなかった。業務効率化への関心は、AI以前からずっと持ち続けていたものだ。そこにツールとしてAIが現れた。

美容サロンコンサルティング ma chérie
オフィスでの打ち合わせの様子

使う前は、どうしていたか

AIを使う前、社内の進行管理はすべて森氏がアナログでやっていた。

スタッフが何を抱えているか。誰がどの仕事を担当しているか。期日は過ぎているのか、いないのか。そのすべてを自分で拾いに行く。終わっているかどうかを確かめるには、スタッフに連絡して聞くしかない。報告が上がってくればいいが、そうでなければこちらから確認する。

「僕が忘れるわけにもいかないので」

管理する側が全部を覚えていなければ回らない。その構造そのものが、時間を奪っていた。

いま、どう使っているか

いま、社内の確認業務は自社のポータルサイトに集約されている。AIで構築したものだ。

ただし、使う範囲は最初から決めている。クライアントの情報を積極的にAIに投げることはしない。

「どこで個人情報が漏れるか分からないので」

AIを使うのは、あくまで社内の業務効率化。その線引きの上で、仕組みをつくってきた。

誰かに任せた仕事には期日が設定され、超過すると自動でアラートが飛ぶ。期日を過ぎたタスクは色が変わり、トップに一覧で表示される。開いた瞬間に、誰の何が終わっていないかが分かる。

さらに、確認そのものも人の手を離れた。

「毎朝7時にAIが確認しに行って、期日が過ぎているタスクがあれば、その人をメンションして自動的にSlackでメッセージを送る。そこまでやっています」

自社のホームページとブログの更新も自動化した。毎日、AIが記事を作成して投稿する。何が公開されたかはポータルサイトに抽出され、目で確認できるようになっている。

美容サロンコンサルティング ma chérie
AIで組み上げた自社のポータルサイト。タスク、クライアント、分析、ナレッジが一つの画面に集約されている

使うツールも移り変わってきた。当初はChatGPT。現在のメインはClaudeとClaude Codeで、Notion AIも併用している。

学び方は独学だ。セミナーには通っていない。

「これは違う、こうしたらいいんじゃないか、こうしたらこういう回答が返ってくる。それを自分でやり続けています」

頭の中にあるイメージを言語化してプロンプトに落とすのが難しいときは、その言語化さえAIに任せる。思っていることを箇条書きで一気に吐き出し、まとめさせ、まとまったものを改めて指示として投げ直す。

移動時間の使い方も徹底している。

「パソコンを触らなくてもいい作業を、パソコンを触れる時間帯にやりたくないんです。だから運転中に、イヤホンをつけて喋ります。頭の中のことをバーッと喋って、それをAIがまとめて、目的地に着いた頃にはやりたいことがまとまっている」

うまくいかなかったこと

一方で、AIに任せきれなかった領域もある。

ひとつは文章だ。AIに書かせると、書き手の人柄までは再現できない。絵文字を多く使う人なのか、淡々と書く人なのか。プロンプトで設定しても、言葉尻の細かなところは埋まらない。

「ある程度は汲み取ってくれます。ただ、完璧にはいかないですね」

もうひとつは数字だ。データを抽出させたとき、それが本当に合っているのか。自分で確認しないと信用できない、と森氏は言う。

「顧客とやりとりする中で、言っていることが違う、本当のことが違ったとなると良くない。結局、最終的に人の手が必要です」

社内でのAI活用にも、まだ課題がある。仕組みはすべて森氏がつくっているため、スタッフ自身がAIを操作する場面は多くない。アカウントの問題もあり、ポータルサイトの引き継ぎができないという事情もある。

その代わり、スタッフからは「こういう仕組みが欲しい」という要望を吸い上げるようにしている。上がってきたものを森氏がAIを使って組み込む、というのがいまの体制だ。

美容サロンコンサルティング ma chérie
浮いた時間は、クライアントとの対話に充てられる

これから

これから先に見ているものを、森氏は二つ挙げた。

ひとつは、精度そのものだ。「自分の頭の中を完全にコピーしてほしい」。返ってくる答えが自分の思考そのままであれば、任せられる範囲は一気に広がる。

もうひとつは、活用領域の拡張だ。いまは社内の業務効率化が中心だが、営業にも使っていきたいという。ただし、そこには壁がある。

「結局、AI感が丸出しじゃないですか。AI感がなくAIを使えるようになったら、すごくいいなと」

AIが書いた文章は、使っている人間の目には一発で分かる。だから ma chérie では、AIの出したものをそのまま外に出すことはしない。書き手その人の言葉になるまで、人が手を入れてから世に出す。

「うちのクライアントは対人の仕事なので、温かみ、無機質じゃないことがすごく大事なんです」

AIを下書きの段階までにとどめ、仕上げは人が担う。先に語られた「人柄までは再現できない」という限界の、裏返しの工程でもある。

その森氏が、取材の終盤にこう漏らした。

「今まではAIを使っていると思われたくなかったんです」

外に出さないほうがいいと考えていたものを、いま初めて外に出そうとしている。その理由は、森氏自身の言葉のなかにある。

「本質的なところに仕事の時間を割きたい。結局、社内のことは何もお金を生まないんです。だったら、その時間をクライアントの対応や分析、集客が良くなるために使ったほうが有効的だと思うので。関わった人全てを幸せにしたい。だからこそ、やらなくていいことをやらない。やらないようにAIを活用しています」

森 拓也
PROFILE — 代表者紹介
森 拓也代表

1993年生まれ、愛知県出身。大学卒業まで野球に打ち込む。株式会社アルペン、スポーツマネジメント会社、電通を経てリクルートへ。ホットペッパービューティーのエリア統括マネージャーとして約700店舗を担当した。営業担当の力量によって救われるはずのサロンが救われない現実にもどかしさを覚え、2024年7月に独立。「仕事が趣味」と語る。

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