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コラム

自治体の生成AIで一番多い使い道はあいさつ文!地味だから効く理由

自治体の生成AIで一番多い使い道はあいさつ文
この記事の結論

  • 自治体の生成AIで一番多い使い道はあいさつ文(1292件)
  • 上位5つはすべて文章づくりだった
  • あいさつ文の件数は3年で356件から1292件に
  • 伸び率が大きいのは契約書や例規など専門文書
  • 地味な使い方でも月190時間が51時間になった例がある

生成AIの契約はして、社員も何人かは触っているけれど、「業務で使う」となるとどこから手を付ければいいのかが決まらない。

ネットで見る活用事例は派手で、自社の話には思えない。

そこで、全国の自治体が実際に何に使っているかを、総務省が1,788団体に聞いた3年分の調査で見てみます。

一番多かった答えは、あいさつ文の作成でした。

自治体の生成AIで一番多い使い道はあいさつ文

まず、活用事例の回答をそのまま並べます。

この設問は、生成AIを導入済み、実証実験中、導入予定と回答した団体に複数回答で聞いたもので、件数は回答の合計です。

団体数ではないので、割合には直せません。

それでも、どの使い方が多いかの順番は、この数字からはっきり読み取れます。

上位10の使い道と件数

令和7年度の回答で件数が多い順に、10項目を表にしました。

1位のあいさつ文案の作成は1,292件で、2位の議事録の要約が1,131件、3位の議会の想定問答が1,085件です。

4位のメール文案、5位の企画書案までが1,000件前後で並び、6位以下は800件台から600件台に下がります。

上位が接戦で、6位から差が開くという形です。

順位活用事例件数
1あいさつ文案の作成1,292件
2議事録の要約1,131件
3議会の想定問答の文案作成1,085件
4メール文案の作成1,052件
5企画書案の作成997件
6住民等からの質問に対する回答案の作成848件
7ローコードの作成(マクロ、VBA等)799件
8計画案の作成731件
9マニュアル案の作成730件
10翻訳669件

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」p.5。導入済・実証中・導入予定の団体の複数回答

6位以下も、住民からの質問への回答案、ローコード、計画案、マニュアル案、翻訳と、文章か文書に関わる仕事が続きます。

拍子抜けする結果だが安心してよい

1位があいさつ文と聞いて、拍子抜けした方もいると思います。

ただ、私はこの結果を見て、むしろ安心しました。

全国の自治体が3年かけて選んだ一番多い使い方が、誰にでもできる仕事だったからです。

首長の式辞や広報誌の冒頭、表彰状の文面といった文章は、誰が書いても大きな差が出ない一方で、必ず誰かが書かなければなりません。

そこにAIを当てる判断を、1,292件の回答が支持しています

派手な事例が見当たらなくても、心配は要りません。

上位5つはすべて文章づくり

順位を眺めるだけでは、なぜこの並びになったのかが見えてきません。

そこで、上位5つの中身を見ていきます。

あいさつ文、議事録の要約、議会の想定問答、メール文案、企画書案に共通する点は一つで、どれも文章を作る仕事です。

この共通点から、生成AIが最初に入り込む業務の性質と、会社に置き換えたときに何が当たるのかを考えます。

文章づくりに共通する三つの性質

上位5つの文章には、共通する性質が三つあります。

一つ目は、正解が一つではないことです。

あいさつ文にもメールにも、決まった正解はなく、大きく外していなければ通ります。

二つ目は、下書きがあれば直すほうが速いことです。

白紙から書くより、案を直すほうが人は速く動けます。

三つ目は、間違いがあっても人が気づけることです。

文章は読めば分かるので、確認が一瞬で済みます。

この三つがそろう仕事は、AIの出力をそのまま使わなくても、時間が減ります。

なぜ最初に文章なのか?

上位5つに共通する仕事の性質

  • 正解が一つではなく、大きく外れなければ通る
  • 白紙から書くより、下書きを直すほうが速い
  • 読めば間違いに気づけるので、確認が一瞬で済む

なぜ文章の仕事から始まるのか、資料に理由は書かれていません。

ここからは解釈です。

数字の計算や判断を伴う仕事は、AIが間違えたときの影響が大きく、確認にも手間がかかります。

文章なら、出てきたものを読んで直せば済み、失敗しても損失が小さい

最初に入れる仕事は、失敗の代償が小さいものから、という順番を、自治体は自然に選んでいたように見えます。

あいさつ文の件数は3年で3.6倍に増加

この使い方は、一時的な流行ではありません。

総務省の調査は令和5年度から同じ設問を続けていて、3年分の件数を比べられます。

ここでは、上位5項目の推移を表にしたうえで、伸び率という別の見方も加えましょう。

件数の多さと伸び率は別の話で、伸び率で見ると上位とは違う項目が浮かび上がります。

上位5項目の3年推移

あいさつ文案の作成は、令和5年度の356件から令和6年度に875件、令和7年度に1,292件へ増えました。

3年で3.6倍です。

議事録の要約は281件から1,131件で4.0倍、メール文案は198件から1,052件で5.3倍、企画書案は245件から997件で4.1倍でした。

活用事例令和5年度令和6年度令和7年度3年の伸び
あいさつ文案の作成356件875件1,292件3.6倍
議事録の要約281件755件1,131件4.0倍
議会の想定問答の文案作成145件602件1,085件7.5倍
メール文案の作成198件635件1,052件5.3倍
企画書案の作成245件638件997件4.1倍

出典:同資料 p.5。伸びは令和5年度比で小数第2位を四捨五入

中でも議会の想定問答は145件から1,085件で7.5倍と、上位5つの中で最も伸びています。

答弁の準備という、議会のある自治体ならどこにでもある仕事に、後から一気に広がった形です。

伸び率が大きいのは契約書や例規などの専門文書

件数ではなく伸び率で並べ直すと、順位は入れ替わります。

契約書案の作成は29件から366件で12.6倍、例規案の作成は33件から416件で12.6倍、ポスターやチラシの画像生成は21件から261件で12.4倍でした。

庁内情報の検索も43件から355件で8.3倍です。

件数はまだ上位に届きませんが、最初は文章で慣れ、次に専門文書や検索に広げるという順番が、この数字から読み取れます。

活用事例令和5年度令和7年度伸び
契約書案の作成29件366件12.6倍
例規案の作成33件416件12.6倍
ポスター・チラシ等の画像生成21件261件12.4倍
仕様書案の作成73件636件8.7倍
庁内情報の検索43件355件8.3倍

出典:同資料 p.5。伸びは令和5年度比

なお、データの分析・分類(560件)と動画の作成は令和7年度から項目が増えたもので、過去との比較はできません

地味な使い方でも業務の時間は目に見えて減少

あいさつ文やメールで、本当に効果が出るのでしょうか。

資料には、人口規模とあわせて団体ごとの効果の例が載っています。

ここでは、その中から文章づくりに関わる例を取り上げます。

効果の数値は各団体の自己申告で、「削減」と「削減見込み」が資料の表記のまま並んでいるため、その区別を残して読んでいきましょう。

あいさつ文とメールで月190時間が51時間になった

人口5.1万人のある自治体では、あいさつ文案とメール文案の作成にかかっていた文章作成の時間が、月190時間から51時間になりました

73%の削減です。

使ったのは、活用事例の1位と4位に入る、ごく普通の使い方でした。

人口5.8万人の別の団体は、議会の答弁作成に過去の答弁を参照させ、150問を超える質問のうち最大96%で答弁案の作成や補足資料の準備に生成AIを使っています。

活用した業務効果人口規模
あいさつ文案・メール文案の作成月190時間の文章作成が月51時間に(73%削減5.1万人
議会の想定問答の作成150問を超える質問の最大96%で答弁案の作成や補足資料の準備に活用5.8万人
計画案・企画書案の作成広報誌の特集企画などで年間288時間程度の削減見込み(47%減)18.6万人

出典:同資料 p.6。各団体の報告にもとづく数値

どれも新しい事業を生んだ話ではなく、もともとあった仕事が短くなったという報告です。

効果の例と順位は別の設問である

ここで一つ注意があります。

効果の例と活用事例の順位は、資料の中では別の設問です。

「1位だから効果が大きい」とは、この資料からは言えません

言えるのは、上位の使い方で効果を出した団体が実際にあるということまでです。

逆に言えば、月190時間を51時間にした団体は、特別な仕組みを作ったわけではなく、多くの団体と同じ使い方をしています。

効果の大小は仕組みの派手さではなく、その業務にどれだけ時間がかかっていたかで決まる、という当たり前のことが、この表からは読み取れるでしょう。

会社ならあいさつ文とメールと議事録から始めればいい

ここまでの数字を、会社に置き換えます。

自治体の上位5つは、あいさつ文、議事録、想定問答、メール、企画書でした。

会社にも、そのまま当てはまる仕事がほとんどです。

取引先へのあいさつ、会議の議事録、顧客からの質問への返信、提案書の下書きは、どれも誰かが毎日書いていて、誰が書いても大差がなく、読めば直せる文章です。

ここでは、明日から始める順番を三つに絞ります。

まず初めは誰が書いても同じ文章から

最初に選ぶ仕事の条件は、自治体の上位5つと同じです。

正解が一つではなく、下書きを直すほうが速く、間違いに読めば気づける文章から始めます。

社内向けのお知らせ、取引先への定型の連絡、会議の議事録の要約の三つは、ほとんどの会社にあります。

人を選ぶ必要もなく、その仕事を今している人が、今日から下書きをAIに任せればいい

効果が出るかどうかは、その仕事にどれだけ時間がかかっていたかで決まります。

まず、時間がかかっている文章仕事を一つ見つけるところからです。

明日からの3ステップ

  1. 時間がかかっている文章仕事を1つ選ぶあいさつ、議事録、定型のメールのどれかで、月に何時間かかっているかを、ざっくりでいいので数えます。自治体で効いたのは、この種類の仕事でした。
  2. 下書きをAIに任せ、直すのは人がやるそのまま使う必要はありません。白紙から書くより、案を直すほうが速い。自治体の上位5つは、すべてこの形で使われています。
  3. 慣れてから専門文書と検索に広げる契約書や規程、社内資料の検索は、自治体で伸び率が高かった領域でした。文章で慣れてから広げる順番で十分です。

自治体の1,292件が選んだ順番を、そのまま会社でなぞるだけです。

よくある質問

この記事で扱った数字について、読者から出そうな疑問をまとめました。

資料に書かれていないことは「分からない」と答え、こちらの解釈を含む場合はその旨を添えています。

件数の意味や、効果の例との関係など、数字の読み方に関する質問が中心です。

本文で触れきれなかった点も、ここで補いました。

1292件というのは1292の自治体という意味ですか?

違います。

この設問は複数回答で、件数は回答の合計です。

1つの団体が複数の使い方を答えているので、団体数にも割合にも直せません

順位と件数の比較には使えますが、「何%の自治体があいさつ文に使っている」とは言えません。

あいさつ文が1位なのは自治体だからではないですか?

式辞や表彰状は自治体に多い仕事なので、その影響はあると思います。

ただ、2位の議事録の要約、4位のメール文案、5位の企画書案は、会社にもそのままある仕事です。

上位に共通する「文章づくり」という性質は、自治体に限った話ではありません

効果の例は上位の使い方だから出たのですか?

資料からは言えません。

効果の例と活用事例の順位は別の設問で、紐づけられていません。

言えるのは、上位の使い方で効果を出した団体が実際にある、というところまでです。

伸び率の高い契約書や例規から始めたほうが効きますか?

伸び率が高いのは、始まりの件数が小さかったからでもあります。

契約書案は29件から366件で、件数ではまだ上位に届きません。

多くの団体が文章で慣れてから広げた順番を考えると、最初から専門文書に当てるより、文章から入るほうが失敗しにくいと考えられます。

これは解釈です。

まとめ

全国の自治体が生成AIで一番使っている仕事は、あいさつ文の作成でした。

1,292件の回答があり、3年で3.6倍に増えています。

上位5つはすべて文章づくりで、正解が一つではなく、下書きを直すほうが速く、読めば間違いに気づける仕事です。

地味な使い方でも、月190時間の文章作成が51時間になった団体があります。

伸び率で見ると、契約書案や例規案、画像生成のような専門的な使い方が10倍以上に増えていて、文章で慣れてから広げる順番が読み取れるでしょう。

効果の例と順位は別の設問なので、1位だから効くとは言えませんが、上位の使い方で結果を出した団体は実際にあります。

何に使えばいいか分からず止まっている方は、派手な事例を探す必要はありません。

誰が書いても同じで、必ず誰かが書いている文章を一つ選んで、明日、その下書きをAIに任せてみてください。

自治体の1,292件は、そこから始めています

数値は総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」(2026年4月24日版・調査基準日2025年10月31日)の公表値にもとづく。活用事例と効果の設問は、導入済・実証中・導入予定と回答した団体の複数回答の合計で、団体数ではない。

出典・参考

  1. 総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」令和8年4月24日版
  2. 総務省「地方自治体における生成AIの実証実験・導入状況等調査」公表ページ
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