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事実の会話をするために、AIを使う株式会社識学

大阪 専門・技術サービス
株式会社識学 の取材写真

東京都品川区に本社を置き、大阪をはじめ全国で、組織運営の理論「識学」にもとづく経営・組織コンサルティングを手がけています。資料をつくり、データを分析する仕事はAIに渡し、コンサルタントに残したのは、顧客と向き合う時間。事実だけで会話するために、AIを使っています。

株式会社識学は、東京都品川区に本社を置き、大阪市中央区に大阪支店を構える経営・組織コンサルティングの会社である。組織運営の理論「識学」をもとに、コンサルティングと研修、Webサービスの開発、書籍の出版を手がける。2015年の設立から、名古屋、福岡、仙台へと拠点を広げてきた。

同社がAIを活用する狙いは一つ。コンサルタントを、コンサルティングに集中させることにある。

AIを使い始めたきっかけ

資料をつくる。データを分析する。こうした仕事は、もう人間がしなくてもよいと同社は考えた。

人間がすべきなのは、対面で話すこと、ヒアリングすること、そして「本当にそうなんですか」と深掘りすることだ。同社はそう線を引いた。

聞いた話をまとめ、データにして分解する作業は、AIに任せたほうが楽だ。空いた時間を顧客と向き合う時間に回せば、質問はより深くなり、顧客の満足度も上がるはずだ。これが導入の出発点だった。

背景には、理念からの逆算があると同社は捉えている。識学を世に広めるにはコンサルティングの質を上げなければならず、質を上げるにはコンサルタントの時間をつくらなければならない。だからバックオフィスを効率化する。AIの導入は、この一本の線の上にある。

株式会社識学
人がすべきは、対面で話し、聞き、深掘りすること

いま、どう使っているか

いちばんわかりやすいのは、Claudeを使った資料作成だ。

正確なデータで示せるものではないと断ったうえで、同社は「圧倒的に楽になった」と話す。

業界ごとの傾向は、これまで経験の積み上げの中でしか見えてこなかった。新しく入ったコンサルタントは、そこをゼロから始めるしかない。

変わったのは、速さだけではない。案件が積み上がるにつれ、この業界にはこういう傾向がある、ということが見えるようになった。新しく入った人でも、その土台の上から始められる。

知識はあるのだから、あとは経験を速く回せばいい。成長の速度が、上がった。

営業では、識学の理論にもとづく成長の仕組みに、AIが組み込まれている。

入社してすぐの社員は、営業の仕事とコンサルティングの勉強を並行する。営業にはアポイントを取る電話がある。同社はこの通話を記録し、成果につながった会話を抜き出して、全員に共有している。

取れなかった会話と、取れた会話は違う。取れた会話のスクリプトを土台に、次の一週間を過ごす。すると、百件かけてゼロだったアポイントが二になり、四になる。

上司はどこまで伸ばすかを決め、部下はその達成の方法を考える。結果を事実で確かめ、不足を埋めて、次を決める。この一周を、AIが支えている。識学の言葉を借りれば「結果の完了」だ。

ゼロが二になったのだから、次は四にいける。数字は無機質に返ってくるから、そこに向く感情は最小限で済む。

AIの良さは、恨みっこなしで済むところにあると同社は言う。マネジメントとAIの相性を、同社はここに感じている。

運用の仕組みも、識学の構造に沿っている。上からツールとルールと権限を降ろすトップダウンの形もあるが、同社ではボトムアップで始まることのほうが多い。これがあればこんなことができます、と社員が権限を取りに来て、上長が承認する。最終的な決裁は社長が行う。ただしその判断の材料は、現場から部長が上げた事実だ。

一人ひとりの利用時間と利用量は可視化されている。使っていない人からは、取り上げる。

株式会社識学
資料作成とデータ分析はAIへ。空いた時間を顧客との対話に回す

入れてみて、合わなければやめる

導入の前に費用対効果を細かく調べるより、まず入れてみるのが同社のやり方だ。

「とりあえずやって、あかんかったらやめる。いけるんやったら使う。それを繰り返しているだけかなと思います」

AIに限った失敗例を尋ねても、すぐには挙がらない。使ってみて初めて便利かどうかがわかるので、使いにくければ次に変える。それだけのことだと同社は言う。

AI以外の仕組みでは、出張の手配に使っていたツールを乗り換えた例がある。理由は、煩雑だったからだ。

大事なのは、合わないと気づける仕組みだ。同社はそれを「不満」ではなく「不足」として上げさせる。不満は感情だが、不足は求める結果に足りていないという事実である。事実であれば、手の打ちようがある。この文化があれば、合わないものは残らない。

株式会社識学
合わないと気づける仕組みがあれば、合わないものは残らない

これから

これからも、入れてみて、合わなければやめる。その答えは変わらない。

ただし、条件がある。AIを使うこと自体が目的に変わった瞬間を、見抜けるかどうかだ。

そのセンサーは、人が担う。「うまくいっています、現状維持です」は同社にとって衰退を意味する。どこかで不足を挙げる人がいなければ、組織は今のままで進んでしまう。

同社がAIに求めているのは、答えではない。事実だけで会話できる場をつくり、人が向き合うべきことに時間を返すことだ。識学とAIは、その一点で噛み合っている。

安藤 広大
PROFILE — 代表者紹介
安藤 広大代表取締役社長

2002年に早稲田大学を卒業後、NTTドコモに入社。その後ジェイコムホールディングス(現ライク株式会社)に移り、主要子会社で取締役東京本社営業副本部長などを歴任した。現場の最前線で組織マネジメントに携わるなかで、自らが直面した組織課題を解決に導いた「識学」と出会う。このメソッドを世に広めるため、2015年に株式会社識学を設立。設立から一貫して代表取締役社長として会社の成長を牽引し、2019年に東証マザーズ(現東証グロース)へ上場した。著書『リーダーの仮面』を含む書籍はシリーズ累計170万部を超える。

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