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自治体の生成AIは0円で始めていた!1788団体に聞いた本当の相場

自治体の生成AIは0円で始めていた!
この記事の結論

  • 導入コストの最多回答は「0円」(705件)
  • 年間の運用コストも「0円」が最多(468件)
  • 大半は既製ツールをそのまま使う(1,353件)
  • 文章作成が月190時間→51時間に減った例も
  • 有料組の投資先は、知識を読ませるRAG
  • 0円でも、ルールと入力情報の線引きは先に決めている

生成AIを会社に入れたいけれど、いくらかかるのか、専用のシステムを頼まないといけないのかが分からない。

ベンダーに聞けば高いものを勧められそうで、聞けない。

そこで止まっている方は多いと思います。

そういう方に、一つの相場をお見せします。

相場の出どころは民間の見積もりではなく全国1,788の自治体すべてに聞いた総務省の調査です。

自治体の生成AIは導入コストがほとんどかかっていない

まず、調査の全体像と、コストの設問の結果から見ていきます。

この調査は一部を抜き出す調査ではなく、すべての団体に聞いていて、回答率も100%です。

数字の重みを確かめたうえで、最も多かった回答が「0円」だったという事実と、その数字をどこまで読んでよいかの線引きを、順に整理します。

1788団体すべてに聞いて最多回答は0円

調査は総務省が毎年行っているもので、令和7年度分は2025年10月31日時点の状況を1,788団体すべてから集めています。

回答率は100%です。

コストの設問に答えたのは、生成AIを導入済み、実証実験中、導入予定と回答した団体で、1,244団体が答えました

前年までの基準日は12月31日だったので、今回の数字は前年より2か月早い時点のものでもあります。

その回答で最も多かった金額が、こちらです。

設問 最も多かった回答 件数
生成AIの導入コスト 0円 705件
生成AIの年間ランニングコスト 0円 468件

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」p.19

導入にも、運用にも、お金をかけていない自治体が最も多い

これがこの調査から分かる事実です。

0円は一番多かった回答であって平均ではない

ただし、読み方には注意が要ります。

「0円」は回答の中で最も多かった金額であって、平均でも中央値でもありません

有料で入れている団体も当然あります。

言えるのは「0円で始めた自治体が最多だった」というところまでで、「自治体は0円で入れられる」ではないのです。

この線は、記事の中で守ります。

有料で入れた団体がいくら払っているかの分布は、資料には載っていません。

この記事で0円を「相場」と呼ぶのは、最も多くの団体がそこから始めた、という意味です。

0円の中身は既製のツールをそのまま使う運用

0円という回答の中身は、資料に直接は書かれていません。

ただ、活用パターン、契約方法、カスタマイズの有無という三つの設問を並べると、自治体がどういう形で生成AIを使っているかは見えてきます。

ここでは、その三つの設問の結果と、資料に載っているサービス名の扱いを、混ぜないように分けて見ていきましょう。

既製ツール・約款型契約・カスタマイズなしがそれぞれ最多

三つの設問で最も多かった回答は、次のとおりでした。

設問 最も多かった回答 件数
生成AIの活用パターン 提供元企業が開発・公開している生成AIツールを活用 1,359件
契約方法 約款型外部サービスによる利用 741件
カスタマイズの有無 カスタマイズしていない 1,353件

出典:同資料 p.13・p.14・p.18

「0円」の中身について(推測を含みます)

0円が無料版の利用なのか、無料枠の範囲内なのか、既存の契約に含まれているのかは、資料からは分かりません。

ここは推測になりますが、既製ツールをそのまま使う団体が1,359件と圧倒的に多いことから、無料で使える既製のサービスから始めた団体が相当数含まれていると見るのが自然です。

つまり、既製のツールを、約款に同意して、そのまま使うのが、自治体の生成AIの標準的な入れ方です。

専用システムの開発を発注した団体は、少数派でした。

資料に載っているサービス名は有料の自治体向け製品

資料には、導入されているサービス名も載っています。

上位4つはQommonsAI、LoGoAIアシスタント、自治体AI zevo、exaBase生成AI for 自治体で、いずれも自治体向けに作られた製品でした。

ただし、これらは有料の製品です。

0円組が具体的に何を使っているかは、資料には書かれていません。

ここを混ぜて読むと事実と違ってしまうので、分けて書いておきます。

資料はこの4つを「自治体向けのサービスが上位4位を占めた」とまとめています。

一般企業がそのまま同じものを使うわけではない、という点も添えておきましょう。

普通の使い方で業務の時間は目に見えて減っている

お金をかけずに始めて、効果は出るのでしょうか。

資料には、人口規模とあわせて団体ごとの効果の例が載っていて、これがこの章の中心になります。

見ていきたいのは、効いた業務がどういう種類の仕事だったのかという点で、派手な事例ではなく、もともとあった普通の仕事の時間がどう変わったかに注目したいと思います。

月190時間の文章作成が51時間になった団体がある

資料に載っている効果の例を、そのまま表にしました。

左が活用した業務、中央がその団体が報告した効果、右が団体の人口規模です。

効果の数値は各団体の自己申告で、資料には「削減」と「削減見込み」の両方が並んでいるため、区別したまま載せています。

1行目は、5.1万人の団体で月139時間が浮いた計算になります。

活用した業務 効果 人口規模
あいさつ文案・メール文案の作成 月190時間かかっていた文章作成が月51時間に(73%削減 5.1万人
議会の想定問答の作成 過去の答弁を参照させ、150問を超える質問のうち最大96%で答弁案の作成や補足資料の準備に活用 5.8万人
計画案・企画書案の作成 広報誌の特集企画などで年間288時間程度の削減見込み(47%減) 18.6万人
ローコードの作成(マクロ・VBA) 累計約4,250時間の削減見込み 9.4万人
データの分析・分類 2か月の実証で103時間削減 17.5万人

出典:同資料 p.6。各団体の報告にもとづく数値で、「削減」と「削減見込み」は資料の表記のまま

どれも派手な話ではなく、あいさつ文にメール、答弁、企画書といった、もともとあった仕事が短くなったという報告ばかりです。

効いたのは活用事例の上位に入るごく普通の使い方

注目したいのは1行目です。

月190時間が51時間になった団体は、人口5.1万人の規模でした。

大きな団体ではありません。

使ったのはあいさつ文とメール文の作成で、どちらも活用事例の1位と4位に入る、ごく普通の使い方でした。

同じ表の他の例も、企画書、マクロ、データ分析と、どれももとからあった業務です。

新しい事業を生んだという報告は、この資料にはありません。

この表の効果が0円の団体のものかどうかは、資料には書かれていません。コストと効果は別の設問だからです。

お金をかける先はAIを作ることではなく知識を読ませること

では、0円ではない団体は何にお金を使っているのでしょうか。

カスタマイズの設問を見ると、はっきりしてきます。

ここでは、カスタマイズの方法別の件数を紹介し、最も多かった「RAG」という仕組みが何なのかを説明したうえで、お金をかける先がどこだったのかを整理します。

カスタマイズ390件のうち329件がRAG

カスタマイズしている団体の内訳です。

カスタマイズの方法 件数
生成AIのモデルはそのままで、外部ソースとして業務知識を参照させている(RAG) 329件
APIにより、特定分野に対応した生成AI環境を構築 24件
ファインチューニングにより、特定分野に対応した生成AI環境を構築 19件
その他 14件

出典:同資料 p.15。カスタマイズしている団体は390件、していない団体は1,353件(p.14)

カスタマイズしている390件のうち、329件がRAGです。

RAGというのは、AIのモデル自体は既製のまま、自分たちのマニュアルや会議録を参照させて答えさせる仕組みのことを指します。

参照させている業務知識は、多い順にマニュアル、議会会議録、法令、FAQ集、計画でした。

既製のAIをそのまま使う段階から、自分たちの文書を読ませる段階へ進んだ、というのがRAG組の違いです。

1位がマニュアルなのは、問い合わせ対応や手続きの確認に使う場面が多いからだと考えられますが、これは推測にすぎません。

モデルを作り直した団体は19件だけ

ここで分かるのは、お金をかける先は「AIを作ること」ではなく「自分たちの知識をAIに読ませること」だったという点です。

先ほどの効果の表にあった「議会の想定問答」の例は、まさにこのRAGでした。

過去の答弁を参照させたことで、150問を超える質問の最大96%に対応しています。

0円で始めて、効いた業務にだけ次の投資をする、という順番で十分だと、この数字が教えてくれます。

モデルをゼロから作り直すファインチューニングは19件だけで、ほとんどの団体はそこまでしていません。

0円の自治体もルールと入力情報の線引きは先に決めている

費用をかけていないからといって、何も決めずに使っているわけではありません

資料には、利用ガイドラインの策定状況、生成AIに入力してよい情報の線引き、導入の課題という三つの設問があります。

この三つを並べると、0円の自治体が費用より先に何を決めていたのかが見えてきます。

ガイドラインは策定済が853団体で初めて未策定を上回った

生成AI利用のガイドラインは、「策定済」が853団体で、初めて「未策定」の737団体を上回りました

導入済みの団体に限ると、81%がすでにガイドラインを持っています

実証中の団体では38%でした。

令和6年度は策定済647団体に対して未策定が1,004団体で、まだ逆転していませんでした。

1年で策定済が206団体増えて、順位が入れ替わったことになります。

策定の勢いは、導入の広がりと同じ方向に動いていると言えるでしょう。

入力してよいのは公開情報だけが最多

もう一つ、入力してよい情報の線引きも決めています。

生成AIに入力可能な情報資産の機密性分類を見ると、「機密性1相当」が654件で最多でした。

要するに、公開してよい情報だけを入れるという運用が最も多いということです。

機密性が高い「3B相当」を入れている団体は49件で、最も少ない回答でした。

その間の「機密性2相当」は293件、「3C相当」は59件で、内部の情報を入れている団体もありますが少数です。

線引きを決めたうえで、まずは外に出せる情報から使う、という順番が読み取れます。

課題の1位はお金ではなく正確性

導入の課題として挙がった回答も、多い順に「AI生成物の正確性への懸念」「取り組むための人材がいない、または不足している」「要機密情報流出の懸念」で、お金の話は上位に入っていません

0円の自治体が、先に決めていたこと

  • 使い方のルール(ガイドライン)を作っておく。導入済み団体の81%が策定済みです。
  • 入力してよい情報を決めておき、最も多かったのは公開情報だけを入れる運用でした。
  • 正確性は人が確かめる。導入の課題で最も多かった回答は、正確性への懸念でした。

この三つはどれも、費用をかける前に決められることです。

会社も自治体と同じ順番で始められる

ここまでの数字を、会社に置き換えてみます。

自治体は予算に慎重で情報の扱いにも厳しい組織ですが、その自治体が、既製ツールをそのまま使い、公開情報だけを入れる運用で始めていました。

同じ順番を会社でなぞるとどうなるのか、明日からできる形に落として整理します。

予算に慎重な自治体の最多回答が0円だったという事実

自治体の入れ方をもう一度並べると、最多回答は0円、既製ツールをそのまま使い、入れる情報は公開情報だけでした。

予算にも情報の扱いにも慎重な組織が、この形で始めています。

同じ順番なら、会社でも無理はありません

会社にとって参考になるのは、この順番そのものです。

ツールにお金を払う前にルールを決め、ルールを決めてから使う範囲を広げる。

自治体の回答から分かるのは、費用より先に決めることがあった、ということです。

この順番は、会社の規模に関係なく使えます。

明日からの3ステップ

  1. 既製のツールを、1人が、1つの業務で使ってみるあいさつ文、メール、議事録の要約から始めます。自治体で効いたのも、この仕事でした。専用システムも見積もりも、まだ要りません。
  2. 入れてよい情報と、ルールを先に決める公開してよい情報だけを入れる。出てきた文章は人が確かめる。自治体はこの2つを、費用より先に決めていました
  3. 効いた業務にだけ、次のお金をかける社内のマニュアルやFAQをAIに読ませる(RAG)のが、自治体が選んだ次の一手でした。モデルを作り直す必要はありません。

順番はこのとおりで、三つとも今週から始められることばかりです。

よくある質問

この記事で扱った数字について、読者から出そうな疑問をまとめました。

資料に書かれていないことは「分からない」と答え、推測を含む場合はその旨を添えています。

0円の中身や、効果の例との関係など、数字の読み方に関する質問が中心です。

本文で触れきれなかった点も、ここで補いました。

資料に書かれていないことは「分からない」と答え、推測を含む場合はその旨を添えています。

本文で触れきれなかった点も補います。

0円で始めた自治体はずっと0円のままなのですか?

資料からは分かりません。

年間ランニングコストの最多回答も0円(468件)ですが、導入コスト0円の705件より少ないので、運用段階で費用をかけ始めた団体があると考えられます

ただし、これは推測です。

自治体向けのサービスと一般企業が使えるサービスは違うのですか?

資料の上位4製品は自治体向けに作られたものです。

一般企業には、それぞれの提供元が公開している既製のサービスがあり、自治体の「既製ツールをそのまま使う」という入り方自体は、そのまま当てはまります

効果の数字は0円の団体のものですか?

分かりません。

コストと効果は別の設問で、資料の中で紐づけられていません。

表にあるのは、業務と人口規模だけです。

RAGを組むにはいくらかかりますか?

この調査には、カスタマイズの方法と件数は載っていますが、費用は載っていません

RAGは既製のモデルに自分たちの文書を参照させる仕組みなので、モデルを作り直す場合より費用は抑えられるのが一般的ですが、金額は構成によって変わります。

まとめ

全国1,788の自治体すべてに聞いた調査で、生成AIの導入コストとして最も多かった回答は0円でした。

年間の運用コストも0円が最多です。

中身は、提供元が公開している既製のツールを、約款に同意してそのまま使う運用で、専用のシステムを作った団体は少数派でした。

それでも、効果は出ています。

あいさつ文やメール文の作成といった普通の使い方で、月190時間の仕事が51時間になった団体があります。

お金をかけている団体が使っている先は、AIを作ることではなく、自分たちのマニュアルや会議録をAIに読ませることでした。

0円の団体も、例外ではありません。

使い方のルールと、入力してよい情報の線引きだけは先に決めています。

生成AIの導入を「いくらかかるか分からないから動けない」で止めている方に、お伝えしたいことがあります。

予算に慎重な自治体の相場が、まず0円でした。

始める費用は、判断を止める理由にはならない

この調査は、そう読めます。

既製のツールを1人が1つの業務で使ってみるところから、始めてみてください。

数値は総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」(2026年4月24日版・調査基準日2025年10月31日・1,788団体すべてに聞いた全数調査)の公表値にもとづく。コストや効果の設問は、導入済・実証中・導入予定と回答した団体(1,244団体が回答)が対象。

出典・参考

  1. 総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」令和8年4月24日版
  2. 総務省「地方自治体における生成AIの実証実験・導入状況等調査」公表ページ
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