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AIで浮いた時間を自治体は何に使った?637人が選んだ答え

AIで空いた時間を何に使った?
この記事の結論

  • 浮いた時間の使い道1位は内部事務の改善(637件)
  • 2位は住民対応の時間を増やすこと(622件)
  • 休暇取得や残業削減にも440件が回した
  • 順位は2年でほとんど変わっていない
  • 使い道を先に決めた組織ほど効果が残る

生成AIで時間が減りそうだというところまでは分かってきたものの、減った時間をどうするのかが決まっていない。

社員からは「結局は人を減らす話なのでは」という空気を感じる。

総務省が全国の自治体に聞いた調査には、削減できた時間を何に使ったかという設問があり、2年分の回答が載っています。

一番多かった答えは、次の改善でした。

浮いた時間の使い道は次の改善と人と向き合う時間

まず、設問の答えをそのまま並べます。

この設問は「生成AI導入により得られた効果(業務削減時間)の活用方法」を、導入済み、実証実験中、導入予定と回答した団体に複数回答で聞いたものです。

件数は回答の合計で、団体数ではありません。

それでも、どの使い道が多いかの順番は、この数字からはっきり分かります。

使い道8項目と件数

令和7年度で最も多かったのは「業務プロセス改善、IT導入など内部事務の改善検討・実施」で637件でした。

次が「住民対応時間の確保など住民サービスの向上」の622件で、この2つがほぼ並んでいます。

3位は既存事業の改善・見直しで562件、4位は新規施策・事業で441件、5位は年次有給休暇の取得や時間外勤務の削減といったワークライフバランスの向上で440件でした。

順位削減時間の使い道件数
1業務プロセス改善、IT導入など内部事務の改善検討・実施637件
2住民対応時間の確保など住民サービスの向上622件
3既存事業の改善・見直しの検討・実施562件
4新規施策・事業の検討・実施441件
5年次有給休暇取得・時間外勤務時間削減などワークライフバランスの向上440件
6就業環境の改善検討・実施243件
7教育受講など職員の人材育成123件
8組織構造・規則等の見直しの検討・実施113件

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」p.7。導入済・実証中・導入予定の団体の複数回答

6位以下は就業環境の改善が243件、職員の人材育成が123件、組織構造や規則の見直しが113件です。

上位2つは次の改善と人と向き合う時間

1位と2位を、言い換えてみます。

1位の内部事務の改善は、浮いた時間で次の改善をするということです。

生成AIで減った時間を、業務の流れを直したり別のITを入れたりすることに使い、削減を一回で終わらせていません

2位の住民サービスの向上は、人と向き合う時間に戻すということです。

窓口や相談に使える時間を増やしています。

削減した時間を、次の改善と人に返している

これが、637件と622件が選んだ答えです。

会社に置き換えれば、業務改善と、顧客と向き合う時間になります。

順位は2年でほとんど変わっていない

この設問は令和6年度から始まったもので、2年分の回答があります。

件数はどの項目もおよそ2倍になりましたが、それは使い道の傾向が変わったからではありません。

ここでは、2年分を並べた表を出したうえで、件数が増えた理由と、順位が動いていないという事実を分けて見ていきます。

増え方に目を奪われると、読み違えます。

2年分の件数を並べる

令和6年度と令和7年度を並べると、1位の内部事務の改善は347件から637件、2位の住民サービスの向上は340件から622件、3位の既存事業の見直しは305件から562件でした。

4位の新規施策は223件から441件、5位のワークライフバランスは227件から440件です。

どの項目もおよそ1.8倍から2倍に増えていて、順位は上位5つがそのままです。

削減時間の使い道令和6年度令和7年度
内部事務の改善検討・実施347件637件
住民サービスの向上340件622件
既存事業の改善・見直し305件562件
新規施策・事業223件441件
ワークライフバランスの向上227件440件
就業環境の改善125件243件
職員の人材育成66件123件
組織構造・規則等の見直し64件113件

出典:同資料 p.7。本設問は令和6年度から実施

4位と5位が入れ替わった程度で、傾向としては同じ答えが2年続いています

件数が倍になったのは答えた団体が増えたから

件数がほぼ2倍になった理由は、資料の別のページにあります。

この設問に答える対象の団体は、令和6年度が903団体、令和7年度が1,244団体でした。

答えた団体そのものが1.4倍に増えています。

使い道の傾向が変わったのではなく、生成AIを使う団体が増えたと読むのが正しい見方です。

2年分の表の読み方

  • 件数が2倍になったのは、答えた団体が903から1244に増えたため
  • 上位5つの順位はそのまま(4位と5位が入れ替わった程度)
  • 傾向は2年続けて「次の改善」と「人と向き合う時間」

使う団体が増えても、浮いた時間の使い道は同じでした。

浮いた時間は月139時間の団体もあれば累計4250時間の団体も

そもそも、どれだけの時間が浮くのでしょうか。

資料には総量の集計はなく、代わりに人口規模とあわせた団体ごとの効果の例が載っています。

ここでは、その例を表にしたうえで、数字の読み方を確かめましょう。

効果の数値は各団体の自己申告で、資料には「削減」と「削減見込み」の両方が並んでいるため、その区別は残したまま載せます。

団体ごとの効果の例

人口5.1万人のある自治体では、あいさつ文とメール文の作成にかかっていた月190時間が51時間になりました。

差し引きで月139時間が浮いた計算です。

人口9.4万人の団体では、マクロコードの自動生成で累計約4,250時間の削減を見込んでいます。

人口18.6万人の団体は、広報誌の企画などで年間288時間程度の削減見込み、人口17.5万人の団体はデータ分析の実証で2か月に103時間の削減でした。

活用した業務効果人口規模
あいさつ文案・メール文案の作成月190時間が月51時間に(73%削減5.1万人
計画案・企画書案の作成年間288時間程度の削減見込み(47%減)18.6万人
ローコードの作成(マクロ・VBA)累計約4,250時間の削減見込み9.4万人
データの分析・分類2か月の実証で103時間削減17.5万人

出典:同資料 p.6。各団体の報告にもとづく数値で、「削減」と「削減見込み」は資料の表記のまま

どれも、もともとあった仕事が短くなった結果として浮いた時間です。

効果の例と使い道の設問は紐づいていない

ここで注意が一つあります。

効果の例と、使い道の設問は、資料の中で別の設問です。

月139時間を浮かせた団体がその時間を何に使ったかは、資料には書かれていません。

言えるのは、時間が浮いた団体が実際にあり、使い道を答えた団体が1,244団体いるというところまでです。

それでも、月139時間という数字は、会社にとって想像しやすい規模だと思います。

社員1人分の月の労働時間に近い時間が、あいさつ文とメールだけで浮いたということです。

その時間を何に使うかを、先に決めておく価値は十分にあります。

この設問は減らした時間を何に使うかを聞いている

この設問の選択肢を見ていて、気づいたことがあります。

8つの選択肢のどこにも、人員削減という項目がありません。

これをどう読むかは、慎重に書く必要があります。

ここでは、設問の設計が何を前提にしているかと、そこから会社が受け取ってよいことを分けて整理します。

設問にないことと、実際に起きていないことは別だからです。

選択肢に人員削減という項目はない

8つの選択肢は、内部事務の改善、住民サービスの向上、既存事業の見直し、新規施策、ワークライフバランス、就業環境、人材育成、組織や規則の見直しです。

どれも浮いた時間を何かに使うという前提で作られています。

人を減らすという選択肢はありません。

ただし、これは設問の設計の話です。

人を減らした自治体がないという意味ではありません。

その他の回答もあり、資料からは中身が分かりません。

ここを混ぜると事実と違ってしまうので、分けて書いておきます。

会社が受け取ってよいこと

それでも、この設問の設計から会社が受け取ってよいことはあります。

総務省が自治体に聞いたのは「減らせたか」ではなく「減らした時間を何に使ったか」でした。

削減は目的ではなく、使い道が本題だという前提で調査が作られています。

そして自治体の答えは、次の改善と、人と向き合う時間でした。

会社で生成AIを入れるときに、社員が一番気にするのは「その先」です。

浮いた時間の使い道を先に決めて、先に伝える。

それだけで、社員の受け止め方は変わると思います。

これは資料の数字ではなく、私の考えです。

会社なら浮いた時間の使い道を先に決めてから入れる

ここまでの数字を、会社に置き換えます。

自治体の答えは、次の改善と、人と向き合う時間でした。

会社なら、業務改善と、顧客と向き合う時間になります。

どちらも「AIを入れたから」ではなく、「時間ができたから」できることです。

ここでは、入れる前に決めておくことを三つに絞ります。

順番が大事で、AIを入れてから考えるのでは遅いと考えているからです。

先に決めるべきは使い道であって削減量ではない

多くの会社は「どれだけ減らせるか」から入ります。

自治体の設問は逆で、「減らした時間を何に使うか」を聞いていました。

先に決めるべきは使い道で、削減量は結果です。

使い道が決まっていれば、社員は「自分の仕事がなくなる」ではなく「この時間で何をするか」で受け止められます

自治体の1位と2位は、業務の改善と、人と向き合う時間でした。

会社なら、たとえば顧客への返信を早くする、提案の質を上げる、社員の休みを増やすなど、どれでも構いませんが、一つに決めて、先に言うことが要ります。

明日からの3ステップ

  1. 浮いた時間の使い道を1つ決めて社員に先に伝える顧客対応の時間を増やす、業務の改善に充てる、休みを増やすなど、何でも構いません。自治体の上位2つは、次の改善と人と向き合う時間でした。
  2. 時間がかかっている文章仕事から減らすあいさつ文とメールで月139時間が浮いた団体があります。特別な仕組みではなく、普通の使い方でした。
  3. 減った時間を決めた使い道に実際に回す減らして終わりにしないことが、自治体の1位の答えでした。浮いた時間で次の改善をする。それが2年続いています。

決めて、減らして、回す。

この順番なら、社員に説明できます。

よくある質問

この記事で扱った数字について、読者から出そうな疑問をまとめました。

資料に書かれていないことは「分からない」と答え、こちらの考えを含む場合はその旨を添えています。

件数の意味や、効果の例との関係など、数字の読み方に関する質問が中心です。

本文で触れきれなかった点も、ここで補いました。

637件というのは637の自治体という意味ですか?

違います。

この設問は複数回答で、件数は回答の合計です。

1つの団体が複数の使い道を選んでいるので、団体数にも割合にも直せません

順位と件数の比較には使えますが、「何%の自治体が内部事務の改善に使った」とは言えません。

人を減らした自治体はないということですか?

そうは言えません。

選択肢に人員削減という項目がないのは設問の設計の話で、実際に人を減らした団体があるかどうかは、この資料からは分かりません

その他の回答もあります。

浮いた時間の合計はどれくらいですか?

資料に総量の集計はありません。

載っているのは、人口規模とあわせた団体ごとの効果の例だけです。

月139時間、年間288時間、累計4,250時間といった数字は、それぞれ別の団体の自己申告です。

使い道は会社でも同じになりますか?

分かりません。

自治体の1位と2位を会社に置き換えれば、業務改善と顧客と向き合う時間になりますが、これはこちらの解釈です。

会社ごとに決めることで、決めて先に伝えることのほうが大事だと考えています。

まとめ

全国の自治体が、生成AIで浮いた時間を何に使ったかという設問に、令和7年度は1,244団体が答えました。

一番多かったのは内部事務の改善で637件、次が住民サービスの向上で622件です。

浮いた時間を次の改善と人と向き合う時間に回しているということで、この順位は2年続けて変わっていません。

件数が2倍になったのは、答えた団体が増えたからです。

どれだけ浮くかは団体ごとの例しかありませんが、あいさつ文とメールだけで月139時間が浮いた団体があります。

使い道の設問は、減らせたかではなく、減らした時間を何に使ったかを聞いていました。

削減が目的ではなく、使い道が本題だという前提で作られた調査です。

会社で生成AIを入れるとき、社員が一番気にするのは「その先」です。

浮いた時間の使い道を先に決めて、先に伝える。

自治体の637件と622件は、その答えが業務の改善と、人と向き合う時間だったことを教えてくれます。

減らして終わりにしない。

そこから始めてみてください。

数値は総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」(2026年4月24日版・調査基準日2025年10月31日)の公表値にもとづく。削減時間の活用方法の設問は令和6年度から実施され、導入済・実証中・導入予定と回答した団体の複数回答の合計で、団体数ではない。

出典・参考

  1. 総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」令和8年4月24日版
  2. 総務省「地方自治体における生成AIの実証実験・導入状況等調査」公表ページ
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