
ハイテック株式会社は、大阪・梅田の浄水器メーカーです。パンフレットも提案資料も社内で作る会社で、雛形は生成AIに出させ、そこから人の手で大きく作り替えます。自社で開発したろ材の名前はWeb上にない言葉なので、AIからは出てきません。言葉は自分たちで決め、一般的な文言だけAIに手伝ってもらっています。
ハイテック株式会社は、大阪市北区芝田に本社を置く浄水器のメーカーである。浄水器・活水器・赤水除去装置の製造開発と卸販売を手がけ、OEMやPB製品を含めると約200種類を扱う。自社工場は大阪と山口の2か所で、卸先は全国150社にのぼる。
代表取締役の田中栄造氏は、浄水器の外商販売に約20年携わったのち、2023年4月に会社を起こした。パンフレットもホームページも社内で作る会社で、この体制が生成AIの入り口になった。
事業の外でも動く会社である。熊本地震では代理店からの報告を受けて現地に赴き、生活用水と飲料水を2トントラック3台で運んだ。保護猫団体への寄付や子ども食堂の支援も、代理店とともに続けている。
生成AIを使い始めたきっかけ
きっかけは、パンフレットだった。
ハイテックはメーカーでありながら、自社のパンフレットもOEM先に出す提案資料も、外注せずに社内で作っている。デザイナーとホームページの担当者が社員にいるからだ。
そのデザイナーが生成AIに詳しかった。作りたいものの内容を共有したうえで雛形をAIに出させ、人が肉付けしていく。文面の案を出させることも、第三者としての意見を聞くこともあった。誰かが号令をかけた記憶は、田中氏にはない。制作の現場では「結構前から」自然に使われている。

使う前は、どうしていたか
創業前に田中氏が触れていたころの生成AIは、精度が今ほど高くなかった。参考程度に眺めるだけで、実際の制作は同業他社の制作物を検索で探し、皆の意見を集めながら自力で組み立てていた。
時間を取られていたのは、考えることより形にする工程である。代理店が作りたいものを聞き取り、提案資料としてデータに落とす。「内容的に頭でわかってても、それを形に変えるのって結構時間かかったりするものじゃないですか」と田中氏は振り返る。
いま、どう使っているか
いまはラフ案をAIに作らせ、そこから人が大きく作り替える。ブラッシュアップは「うちも強め」だと田中氏は言う。
AIが作るものは型を読むため、細部が違っても根本は似る。詳しい人が見れば、AIで作ったとすぐにわかる。水まわりの業界は出るものが限られるだけに、なおさらだ。だから雛形はあくまで雛形として扱い、独自性を3〜4割、多いときは6〜7割まで盛り込んでから外に出す。プロが作ったと思ってもらえる水準まで、必ず人の手で引き上げる。
代理店向けの提案資料も同じ流れだ。言葉と物だけでは伝わりにくい企画を資料としてデータ化する工程で、AIの力を一部借りている。文字起こしにも使う。
代理店の立ち上げ支援にも広がった。独立して法人化したいという相談が個人から寄せられることがあり、ロゴや会社のイメージを提案する。専門的な仕上がりを求めていない相手なら、AIで簡易に作った案で十分に役に立つ。オフィスの内装イメージを作って渡すこともある。
ホームページの担当者は、ChatGPTやGeminiで自社がどう表示されるかを常に分析し、毎月内容を更新している。取引先が企業に限られるため、企業が検索する言葉でどう見えるかが重視のポイントだ。

AIに任せないと決めていること
専門領域の言葉は、AIに任せない。
浄水器のカートリッジと聞いて多くの人が思い浮かべるフィルターは、ACFという素材を使った一つの型にすぎない。ほかにも複数のろ材を調合したもの、中空糸膜、逆浸透膜があり、ハイテックには自社で開発して名前から決めたろ材がある。
「AIっていうのは、ウェブ上で拾ってる言葉であったり、内容を全部汲み取った上での集約じゃないですか」と田中氏は言う。世の中にまだ存在しないものの言葉は、AIからは出てこない。
言葉は自分たちで決める。その上で、一般的な文言の部分だけAIに手伝ってもらう。
田中氏がAIの危険だと考えているのは、頼りすぎて自分の考えや倫理観を持てなくなることだ。AIの答えは計算の上では正しくても、人には感情がある。一般的にはこうかもしれないが、自分たちはこう考えてきた、と自分の言葉で言える環境を大事にしたいと話す。
これから
ハイテックがこれからAIに任せたいのは、人選である。
製造ラインを高度にしていくには、CADのような専門技能を持つ人が要る。ただ田中氏が見ているのは、技能より内面だ。いまの社風に合うか、協調性を持って働けるか。会社が大きくなるほど、裏切りや不正のダメージは大きくなる。人の性質を読み解く参考にAIを使い、自分の意見と合わせて判断していきたいと考えている。
AIで人を減らすためではない。これから増える人員を必要最低限にし、合う人を迎えるためだ。
背景には、代理店で実際に起きていることがある。ハイテックはAIの活用を代理店に勧めているが、内勤者2名分の業務がなくなり、その人たちの扱いに困る会社が出てきた。会社から見れば人件費が浮く。しかし当人からすれば、急に業務がなくなって困る。田中氏はそうした相談を受けてきた。
いまいる社員は創業当時から会社を支えてきた人たちで、外から能力の高い人を雇うより、皆が嫌な気分にならない環境のほうが大事だと田中氏は言う。1年2年で見ればそれでもいいのかもしれないが、5年、10年、20年、30年と続く会社を考えたときに、そこが一番大事だと田中氏は考えている。
ともに働く人を求めている
製造の仕事であれば、最低限の図面が書けて、工程がわかる人を求めている。法人営業であれば、印象がよく、企業相手の商売に挑戦したい人だ。
ハイテックの最大の強みは、世に出ていない新しいものを生み出すことだと田中氏は言う。ろ材ひとつをとっても、まだ存在しないものを作るので、名前を決めるところから始まる。全員で企画を出し合い、一つの商品にしていく。作った人たちが自宅や実家で使って満足できる。まず身近な人が満足する環境を作り、そこから一緒に未来を作る会社だと話す。
「代表者だから、こうだよっていうのがあまり私もなくてですね」。田中氏はそう言って、皆の協力のもとで一緒に前に進みたいと語った。
浄水器の外商販売に約20年携わり、2023年4月にハイテック株式会社を設立。現場で培った代理店とのつながりを軸に、製造から販促物の制作までを社内で完結する体制を築いた。熊本地震では代理店とともに現地へ生活用水を運ぶなど、社会貢献活動にも力を入れる。休日は平日に使った頭を休めるため、一人でぼんやり過ごすことが多い。映画は時代物が好き。





